3年前、日本で初めてWinMXを使用して著作権を侵害した人が逮捕されました。 WinMXとは、ファイル共有ソフトの一種で、アメリカで開発されたソフトですが、日本語 が使えたために、日本人のファイル交換ユーザーに圧倒的に支持されていました。 しかし、この事件をきっかけに「0パッチ」というものが広く使われるようになりました。 「0パッチ」は、WinMXでファイルが自動的にアップロードされてしまうことを防ぐソフトです。 なぜ、事件がきっかけで「0パッチ」が流行るようになったかというと、警察が自分のパソコンから 著作権で保護されたファイルをダウンロードした場合、それが著作権侵害の証拠となってしまう からです。 しかし、みんながアップロードを拒んで、ダウンロードばかりしようとすると、ファイル共有の ネットワークは成り立たなくなってしまいます。なぜなら、誰かがアップロードしてくれないと 誰もダウンロードできないからです。 そこで、ある人が、匿名性の高い共有ソフトを作りました。 この人のことを、ここでは47さんと呼ぶことにします。 47さんの作ったソフトは、Winnyという名前がつけられました。 Winnyでは、誰がどんなファイルをアップロードしてるのか、外部からは全くわかりません。 なぜなら、何かファイルをダウンロードしても、そのファイルをアップロードしてる人が 必ずしもそのファイルを公開してる人とは限らないからです。 Winnyでは、アップロードする人のパソコンと、ダウンロードする人のパソコンを直接つながないで 途中でいくつものパソコンを経由してダウンロードするようにしたのです。 こうすることで、「0パッチ」を使う人がいなくなり、みんなが安心してファイル共有ソフトを 使えるようになりました。 しかし、47さんは、犯罪の手助けがしたかったわけではありません。 「0パッチ」のような、ファイル共有の妨害をするソフトに対して疑問を持っていただけなのです。 47さんは、著作権侵害の対策も考えました。 「無視リスト」という機能がそれです。 「無視リスト」に、著作権を侵害するファイルを登録すると、著作権を侵害するファイルを 共有している人のパソコンを、ネットワークから切断する機能です。 しかし、著作権を侵害するファイルといっても、もの凄く膨大な量があるので、 すべてを排除することはできません。 47さんは、ユーザーのみんなに、著作権を侵害するファイルを共有しないように注意しました。 去年、Winnyを利用して著作権を侵害したユーザーが逮捕されました。 そのとき、47さんも家宅捜索を受けました。47さんは警察にパソコンを取り上げられ、 Winnyの開発を継続できなくなってしまいました。 しかし、Winnyのネットワークは、サーバーを必要としないため、開発が中断されても 一向に衰退することはありませんでした。 Winnyは100万人以上のユーザーに支持されてましたが、Winnyの存在を快く思わない人が Winnyのユーザーだけが感染するウイルスを作りました。 Winnyは、あまりに素晴らしいソフトだったためか、警察の中にもユーザーがいました。 しかし、この警察の人が自宅でWinnyを使ってウイルスに感染し、そのために捜査資料が Winnyに流れてしまう、という大失態をおかしてしまいました。 あわてた警察は、なんとかWinnyのネットワークを根絶したいと考えました。 しかし、100万人のユーザーを取り締まることは不可能です。 ・・・そこで、開発者である47さんを逮捕することを思いつきました。 しかし、47さんは何も悪いことはしてないので、逮捕することはできません。 ですが、47さんの作ったWinnyを使って、悪いことをしている人はたくさんいます。 事実、Winnyを使って著作権を侵害した人が逮捕されているのです。 ・・・じゃあ、悪いことをした人を手助けした罪で逮捕しよう。 悪いことをした人を手助けすることを「ほう助」といいます。 悪いことをした人が逮捕された場合、「ほう助」をした人も逮捕することができます。 しかし、逮捕された人は47さんとは全く面識がないのです。 面識がないのに、どうやって手助けするのでしょうか? Winnyを開発することは、日本の法律では認められていることです。 警察の人も、Winnyを開発したことで逮捕したのではない、と言っています。 しかし、Winnyを開発したことが、全く面識のない人を手助けしたことになるのなら Winnyを開発したことが犯罪だと言ってるのと同じことです。 こんな詭弁がまかり通っていいのでしょうか? また、すでに47さんのパソコンは押収されているのに 証拠隠滅の怖れがあるなどとして、47さんは警察に勾留されてしまいました。 いったい、何の証拠を隠滅する怖れがあるというのでしょう? 47さんが、全く面識のない人を手助けした証拠とは何でしょう? Winnyを開発したことに対する是非はともかく 警察のやりかたはおかしい!逮捕はやりすぎで不当だ! そう思った数多くの人が、47さんを救うために、あるいは警察の横暴に抗議するために、 たくさんの支援金を集めました。 その金額は、逮捕後、わずか一週間で600万円を超えました。 そして、今も支援金は増えつづけています。 前にも言ったように、Winnyはサーバーを必要としないソフトなので、開発者を逮捕しても 根絶することはできません。すべてのユーザーがWinnyをやめない限り、根絶することは できないのです。それはあたかも、人類が滅亡しなければ「人間社会」を根絶することが できないのと同じことなのです。 Winnyは、たしかに一面では文字通り罪作りなソフトかもしれません。 しかし、Winnyの技術は、想像もつかないような新しい未来への鍵となるかもしれないのです。 ファイル交換ソフトで使われている技術は、世界的にも注目を集めています。 ファイル交換ソフトは、世界中にいろいろな種類がありますが、 Winnyはその中でも、日本人が作った唯一のソフトにして、 他のどのファイル交換ソフトよりもハイレベルな技術が使用されているのです。 たしかに、Winnyを利用した違法行為は後を絶たないのも事実です。 しかし、Winnyを開発すること自体を違法とする法律は、どこにもないのです。 Winnyを取り締まる法律がないのに、でたらめな理由で逮捕されることがあっていいのでしょうか?