NHKニュース10 5/10

 インターネット上で映画や音楽などを手に入れることが出来るファイル交換ソフトというソフトを開発した東京大学の助手が、著作権法違反の幇助、つまり違反を手助けした疑いで逮捕されました。「Winny」というこのソフト、音楽などの違法なコピーが横行する温床になっている、と言われていましたけれども、こうしたソフトを開発した作者が摘発されたのは初めてです。

 今回の「Winny」というソフトは、逮捕された東京大学大学院の助手・金子勇容疑者が開発して、無料で公開しています。「Winny」を自分のパソコンに取り込むと、「Winny」を持っている人同士で、互いにファイルをやりとりすることができます。その仕組みですけど、まず、映像や音楽など、自分のほしいファイルの名前を入力します。すると、他の利用者のパソコンの中にそのファイルがあるかどうかが自動的に検索されます。希望するファイルは自分のパソコンに取り込むことができるのです。

 もちろん著作権のある映画や音楽などを勝手に提供することは著作権法違反です。しかし「Winny」では、ファイルのやりとりの記録というのは暗号化されます。このため、誰から誰にファイルが渡ったのかが突き止めにくい仕組みになっています。警察は、金子助手が当初から違法なコピーを手助けする目的でこのソフトを作ったと見ています

 逮捕された金子助手は、東京大学の大学院で、学生にソフトウェアの開発を指導していました。金子助手は「Winny」の開発をめぐる経緯を、インターネットの掲示板に再三に渡って書き込んでいました。一昨年の4月にはソフトの開発を宣言。さらに「ソフトを開発しても作者の逮捕は無理だ」「現行犯じゃないと逮捕できない」などと書き込み、摘発が難しいソフトだと強調していました。

 このソフトを使った違法なコピーがネット上に氾濫する中、京都府警は去年11月、ソフトを悪用したケースを全国で初めて摘発しました。映画やゲームソフトを無断で公開していたとして、男2人が著作権法違反の疑いで逮捕されました。

 警察は、この事件に関連して、金子助手の自宅を捜索し、パソコンの通信記録などを分析した結果、金子助手がソフトを開発したことを突き止めました。さらに、摘発を逃れるため、ソフトの改良を236回も重ねていたこともわかりました。警察は、当初からソフトが違法に使われることを十分認識した悪質な犯行とみて、著作権法違反を手助けした容疑での逮捕に踏み切りました。

 京都府警の調べに対し、金子助手は容疑を認めた上で、「ソフトを使って違法なコピーを蔓延させることで、時代遅れな著作権のあり方に問題提起をしようと考えた。自分の行為が結果的に法律とぶつかってしまうので逮捕されても仕方がない」などと供述しているということです。

 警察は、ソフト開発の経緯や動機などについて、さらに詳しく調べることにしています。この「Winny」をはじめとする、ファイル交換ソフトを利用している人は、国内で100万人を超えると見られています。ネット社会に広がる違法な行為をどうやって防ぐのか、今後の課題について専門家に聞きました。

(田島正広弁護士のコメント)

 やはりデジタルコンテンツの保護技術というものを高めるということが、まず先なんですよね。コピーの回数を制限したりですとか、あるいは一定期間経過すると使用することができなくなるような技術というものが実際に今考えられていますので、そういったものをさらに推進していく必要があるでしょう。大方の利用者の方々は、実際に違法なファイル交換、違法なコピーというものを、この「Winny」を通して行っている可能性があるわけですね。そのような方々に対しては、自分の行為がやはり著作権を侵害する違法な行為であるということ、これを強く認識していただきたいと思います

 これはあの、こうしたファイル交換ソフトというのは、自分で撮影したビデオをやりとりする場合は違法・・・ではないですよね。

 違法なのは、要するに、著作権で保護されたものを勝手に公開した場合、ということなんですね。映画や音楽をこう、自由にやりとりできるソフトというのは、便利そうに見えますけどね、やはり使う側も著作権法に触れないようにする、という注意をすることが必要だということですよね